ベテランの購買担当者が持つ「見積書の違和感に気づく力」や「交渉の進め方」。その人だけの経験で終わらせず、チームの力に変えるための考え方が、SECIモデルです。
SECIモデルとは
SECIモデル(セキモデル)は、野中郁次郎氏らによる知識創造のモデルです。暗黙知と形式知が相互に変換されることで、個人や組織の知識が生まれ、深まる過程を説明します。
まずは暗黙知と形式知を区別する
- 暗黙知:経験や感覚として身についている、言葉にしにくい知識。例えば、交渉で相手の反応を見て質問を変える勘どころ。
- 形式知:言葉・図・数値などで表せる知識。例えば、見積査定のチェックリストや購買手順書。
暗黙知は「秘密の情報」という意味ではありません。また、形式知は紙の資料に限らず、データや動画などでも表せます。
4つのプロセスを購買の例で理解する
| プロセス | 知識の変換 | 購買での例 |
|---|---|---|
| 共同化(S) | 暗黙知 → 暗黙知 | 先輩の商談に同席し、質問のタイミングや相手への接し方を体験して学ぶ。 |
| 表出化(E) | 暗黙知 → 形式知 | 先輩が見積書のどこを確認しているかを言葉にし、チェックリストにする。 |
| 連結化(C) | 形式知 → 形式知 | 複数担当者のチェックリストや過去の査定記録を組み合わせ、部門の査定手順として整理する。 |
| 内面化(I) | 形式知 → 暗黙知 | 査定手順を実際の案件で繰り返し使い、自分の判断力として身につける。 |
SはSocialization、EはExternalization、CはCombination、IはInternalizationの頭文字です。上の購買事例は、理解のために作成した例です。
覚え方は「一緒に → 言葉に → まとめて → 身につける」
4つの名前だけを丸暗記するより、行動の流れと結びつけると覚えやすくなります。
- 共同化:「共同」で経験する。暗黙知から暗黙知へ。
- 表出化:コツを言葉で「表に出す」。暗黙知から形式知へ。
- 連結化:資料と資料を「つなげる」。形式知から形式知へ。
- 内面化:実践して自分の「内側に入れる」。形式知から暗黙知へ。
購買の仕事なら、「先輩に同席 → コツをメモ → 手順書に整理 → 自分で使って習得」と考えてみましょう。「手順書に整理」は、複数のメモや既存資料を組み合わせる場面です。単にコツを書き出すだけなら表出化に当たります。
表出化と内面化は「外へ・中へ」で区別する
表出化は、頭の中のコツを外へ出すこと。経験の勘どころをチェックリストや言葉にするので、暗黙知から形式知への変換です。
内面化は、資料の知識を自分の中へ取り込むこと。手順書を実際の仕事で使い、判断のコツとして身につけるので、形式知から暗黙知への変換です。
迷ったら、「コツを資料にした? それとも、資料からコツを身につけた?」と考えると区別しやすくなります。読むだけでなく、実践して体得することが内面化のポイントです。
この流れは一度で終わりません。実践で得た新たなコツを周囲と共有し、再び言葉にすることで、知識が広がり深まっていきます。
CPP学習で押さえたいポイント
まず覚えたいのは、各プロセスの名前と「暗黙知・形式知のどちらからどちらへ変わるか」の対応です。
- 表出化と内面化は逆方向:コツを文書にするのが表出化。文書の内容を実践して身につけるのが内面化。
- 共同化と連結化を混同しない:経験を通じた暗黙知の共有は共同化。資料やデータなどの形式知を組み合わせるのは連結化。
- 行動の名称だけで判断しない:「研修」「会議」でも内容によって知識の変換が異なるため、何をどう共有・変換しているかを見る。
例えば「先輩のノウハウをマニュアルにする」は表出化。「そのマニュアルを使って業務を経験し、判断のコツを身につける」は内面化です。学習の整理用の解説であり、実際の出題範囲や表記は使用中の公式教材で確認してください。
引き継ぎでは、資料を作った後の実践まで考える
購買業務の引き継ぎで手順書を渡すだけでは、相手がその知識を使いこなせるとは限りません。商談への同席、判断理由の言語化、資料の整理、実案件での実践を組み合わせると、経験をチームで共有する流れを作れます。


コメント