直接材と間接材の違いをざっくり言えば、製品の生産に直接使われるものが直接材、それ以外の事業運営に必要なモノ・サービスが間接材です。ただし、会社によって区分は異なります。
私はメーカーで約7年間、設備購買を経験した後、転職して現在は間接材購買を担当しています。直接材購買の実務経験はありませんが、前職では直接材を担当する同期や先輩が多く、仕事を身近で見てきました。
この記事では、教科書的な定義だけでなく、実際に間接材購買を担当して感じた難しさや設備購買との違い、身近で見てきた直接材購買の特徴まで、実務目線で解説します。
実務で一番感じる違い:間接材購買はとにかく領域が広く、案件が変わるたびに見積先も社内関係者も変わります。価格交渉だけでなく、ゼロから関係性を作り、ときには「なぜ購買を通す必要があるのか」から説明することもあります。
直接材と間接材の違いとは?
| 比較項目 | 直接材 | 間接材 |
|---|---|---|
| ざっくりした定義 | 製品の生産に直接使われるもの | それ以外の事業運営に必要なもの |
| 例 | 原材料・部品など | 消耗品・IT・広告・コンサル・業務委託・設備など |
| 社内関係者 | 開発・設計・生産・品質・原価管理など | IT・総務・人事・工場など案件ごとに幅広い |
| 特徴 | 製品知識や専門知識が重要になりやすい | カテゴリーの広さと案件ごとの調整が特徴 |
上記はあくまで大まかな整理です。実際の区分や購買部門の担当範囲は会社によって異なります。
間接材購買(Indirect Procurement)とは
間接材購買は、製品の生産に直接使われる材料・部品以外の、会社で必要となる幅広いモノやサービスを調達する仕事です。英語ではIndirect Procurementと呼ばれます。
私が実務で感じるのは、とにかく守備範囲が広いことです。消耗品、オフィス用品、デジタル機器、コンサルティング、広告、業務委託、設備など、同じ「購買」でも案件ごとにまったく違う市場を扱います。
間接材購買で一番大変なのは「毎回ほぼゼロから」なこと
設備購買から間接材購買に移って特に感じたのは、案件ごとに見積先も社内関係者も大きく変わることです。
設備購買では、ある設備Aを購入したメーカーと仕事をする中で「実は同じラインの設備Bも対応できます」と分かり、取引や自分の担当領域が広がっていくことがありました。現場で設備を見ることもでき、私はこの広がり方に面白さを感じていました。設備購買の仕事内容や実体験はこちらにまとめています。
一方、間接材ではデジタル機器の次が広告、その次がコンサルということもあります。サプライヤーだけでなく依頼部門も変わるため、そのたびに相手の事情を理解し、関係性を作るところから始まります。
「購買を通さなくても買えるの?」から始まることもある
間接材購買に移った当初、私が驚いたことの一つが、購買部門を通さずにモノやサービスを買えるケースがあることでした。
設備購買をしていた感覚からすると、「購買部の役割や意義から説明しないといけないのか」と戸惑いました。間接材では、価格交渉以前に購買が関与する意味を社内に理解してもらうことも仕事になります。
購買の関与に否定的な人との調整は簡単ではありません。私はガバナンス上なぜ必要なのかを説明しつつ、正論を押し付けるだけではなく相手の事情にも寄り添うようにしています。時間をかけてやるべきことをやり、きちんと話せば、利害が一致する部分も見えてきます。
間接材購買の価格妥当性はどう判断する?
間接材購買で難しいと感じるのが、価格の妥当性です。カテゴリーが違えば価格の構造も違うため、すべてを同じ方法で査定することはできません。
私の場合、基本は相見積もりを取り、現在の市場感を確認します。過去価格も参考にはなりますが、それはあくまで過去の価格です。市況や条件が変われば、今の妥当価格とは限りません。
価格の「妥当性」は、前提の置き方によって評価が変わる難しいテーマだと思っています。だからこそ、過去価格だけで決めつけず、できる限り同じ条件で複数社を比較し、現在の相場を見ることを重視しています。
実例:一社依存から相見積もりへ変えた
あるサービス領域では、もともと一社の取引先を継続して利用していました。そこで同じ条件で複数社へ見積もりを依頼し、比較できる状態を作りました。
その結果、既存取引先からも従来比で約3割低い価格が提示されました。単に「安くしてください」と交渉するよりも、複数社を比較できる競争環境を作ること自体に大きな意味があると実感した事例です。
転職で伝えたいのは「何を買ったか」より購買プロセス
私が間接材購買の経験として伝えたいのは、特定の購入品を担当したこと以上に、購買プロセスの重要性を社内に説明し、必要に応じて既存の取引構造を見直してきたことです。カテゴリーが変わっても、要件整理、候補先の比較、条件交渉、社内合意という基本プロセスは再現できます。
実際の転職活動でも、直近案件の具体的な購入品や会社固有の情報まで出す必要はないと考えています。「特定カテゴリーで取引先を見直した」「複数ベンダーを比較できる状態を作った」といった粒度でも、何を考えてどう動いたかは十分伝えられます。
直接材購買は何が大変そうなのか
ここは私自身の実務経験ではありません。前職で直接材購買を担当する同期や先輩を身近で見てきた範囲での話です。
直接材購買は、特定の取引先と深く向き合いながら、開発部門や原価管理部門などが関わる原価目標に対してコスト低減を進める場面が多く、かなりハードに見えました。
特に、製品や部品に関する専門知識の重要度は高いと感じます。製品知識がなければ、サプライヤーや社内の技術部門と同じ土俵で話すこと自体が難しくなります。また、厳しい原価低減目標に対して交渉を求められる場面もありました。こうした交渉のあり方は時代とともに変わっていると思いますが、直接材ならではの難しさだと感じていました。
直接材と間接材、どちらが難しい?
私は直接材購買を実務で担当していないため、どちらが難しいとは断定できません。
身近で見た直接材購買は、製品知識や専門性、原価低減目標、開発・原価管理部門との調整が大変そうでした。一方、私が担当している間接材購買は、扱う領域の広さと、案件ごとに異なるサプライヤー・社内関係者との調整に難しさがあります。
同じ購買でも、求められる大変さの種類が違うと考える方が実態に近いと思います。
間接材購買の主な仕事内容
- 社内の依頼内容・仕様・予算・納期の整理
- サプライヤー探索と見積依頼
- 相見積もりと価格・条件の比較
- 価格・納期・契約条件の交渉
- 依頼部門や法務・経理などとの社内調整
- 契約・発注
- 購買ルールや発注方法の整備
単に「安く買う」だけではありません。間接材ではカテゴリーごとに事情が違うため、まず情報を集め、依頼部門と一緒に何を買うべきか整理する力も重要です。
直接材から間接材、間接材から直接材へ転職できる?
私は、購買の基本プロセスには共通点が多いと考えています。見積依頼、比較、サプライヤー選定、価格・納期交渉、社内調整といった基本的な流れは、カテゴリーが変わっても活かせます。
一方で、直接材なら製品・部品に関する専門知識、間接材なら幅広いカテゴリーへの対応など、新しく覚えることは当然あります。転職では「同じものを買った経験」だけでなく、これまでの購買プロセスを別のカテゴリーでも再現できるかを説明することが大切だと思います。
間接材購買に向いている人
- 知らない分野を調べることが苦にならない
- 初対面の社内関係者やサプライヤーとも関係を作れる
- 複数の選択肢を比較して判断できる
- 正論だけでなく相手の事情も考えて調整できる
- 幅広いカテゴリーに興味を持てる
個人的には設備購買が一番好きでした。選定した後も現場で実際の設備を見ることができ、自分が買ったものが動いている実感があります。間接材のコンサルティングなどは、選定後に購買担当が深く関わらないケースもあり、この点は設備購買との違いを感じます。
間接材購買の年収は?
間接材購買だから一律に年収が高い・低いとは言えません。業界や会社規模、担当カテゴリー、購買額、英語使用、マネジメント経験などで差が出ます。担当者・リーダー候補・管理職別の目安は、間接材購買の年収レンジ【2026年版】で公開求人をもとに整理しています。
私が転職活動で重視したのは、求人票の想定年収だけでなく、基本給、賞与、残業代、退職金まで分けて比べることでした。前職では残業込みで約540万円、転職時は残業なしで600万円を希望しました。
希望年収の決め方や面接での伝え方は、購買職の希望年収はどう答える?540→600万円の実例で詳しく紹介しています。
間接材購買への転職で活かせる経験
購買経験者であれば、価格・納期交渉、サプライヤー選定、見積比較、社内調整などを説明しやすいです。未経験でも、営業での価格交渉、総務やITでのベンダー選定、プロジェクトでの関係者調整などは接点があります。
面接では「交渉できます」だけで終わらず、何を買い、誰と調整し、どのように比較・交渉したのかまで具体化すると、自分の経験を伝えやすくなります。
間接材購買の求人を探すときのキーワード
求人では「間接材購買」以外にも、間接購買、サービス購買、IT購買、総務購買、Indirect Procurement、Strategic Sourcingなどの名称が使われます。会社によって呼び方や担当範囲が違うため、複数の言葉で探すと求人を見落としにくくなります。
まとめ|直接材と間接材は「大変さの種類」が違う
直接材は製品の生産に直接使われるもの、間接材はそれ以外の事業運営に必要なモノ・サービス、と整理できます。ただし会社によって定義や担当範囲は異なります。
間接材購買を実際に担当して感じる特徴は、守備範囲の広さです。案件ごとにサプライヤーも社内関係者も変わり、価格の妥当性を考えながら、ゼロから関係を作る必要があります。
一方、身近で見てきた直接材購買では、製品知識や専門性、原価低減、開発・原価管理部門との調整に別の難しさがありました。購買の基本プロセスには共通点があるため、転職ではカテゴリー名だけでなく、自分が経験した交渉・選定・調整のプロセスを伝えることが重要だと考えています。
本記事の間接材・設備購買に関する記述は筆者の実務経験をもとにしています。直接材購買については、筆者自身の担当経験ではなく、前職で直接材購買を担当する同僚を身近で見てきた範囲で記載しています。所属企業固有の情報や機密情報は含みません。

